{ 台所からの手紙 }2013.01.02

Vol.004 小さいお口にポンと入れた

産まれてすぐの入院だったり、喘息で食が細かった君。
夜中の救急外来は何度、訪れたのだろう。
点滴が終わり病院を出るころには朝焼けが広がっている。
真っ赤な空を見上げながら丈夫に産んであげられなかったと自分を責め何度も涙した。

食も細く、食べることにもさほど興味がなかった君が、
子ども用の小さなお茶碗にほんの少しよそったご飯を完食するたびに小躍りして喜んだ。

「何でも食べなきゃ丈夫にならない!」と思っていた新米ママの私は、
どうやったら食べてくれるだろうかといつも考えていた。
台所で支度をする私のところへ遊びにあきた君が来るたびに、
切った野菜を1片、また1片と小さいお口にポンと入れた。そのうち、作ったおかずもお口へポンと。

あれ、けっこう食べるじゃない・・・。いわゆる「つまみ食い」。
それからなんとなく食べさせたいなと思うおかずは「味見して~」と言いながらお口へポンと。
本当はお行儀が悪いことだけど。

でも、食べることに興味を持ってもらいたい。いろんな味を知ってほしい。そう思っていた。

だんだん大きくなり喘息も治まって、何でもよく食べる子に育ってくれた。
でも「はい、味見ね」は変わらない。
そう、つまみ食いは一段と美味しいんだ。