{ 台所からの手紙 }2013.01.02

Vol.005 おいしいおっぱいになる話


珠季へ

珠季は4歳になって、ハハが説明するといろんなことがわかるようになってきたよね。
「たまきもおとなになったらおっぱいでる?」お母さんになったら、たぶん出るかもね。

ハハはお母さんになるまで、自分でおっぱいをあげるのがどういうことかわかってなかったし、
あんまり勉強しなかったの。珠季がおっぱいのこと知りたいなーって思ったのはすごい!
珠季が赤ちゃんのときのこと、教えてあげるね。

珠季が産まれて、ハハははじめてお母さんになったんだよ。
おむつをかえて、お風呂に入れて、お散歩して、寝かせて、細かいお世話もぜーんぶはじめて。
小さい赤ちゃんが、どんどん毎日成長していくのを、よーくよく見ながら、おもしろいなあ〜って思っていたよ。
珠季も、維吹が産まれたらかわいくて夢中になっていったよね。
珠季が産まれた時のハハの気持ちも、そんなかんじだったと思うよ。

珠季が産まれた病院は、おっぱいがよくでるようになるまでは、
ミルクも使っていいよっていう方針だったの。
産まれて5日だけ入院して、退院したら、哺乳瓶からは飲むけど、
おっぱいはあんまり飲まなくなっちゃったんだ。

でもハハはせっかく出るようになってきたおっぱいを飲んでほしかったから、
いろいろ工夫して、飲んでもらえるようにがんばったの。
おっぱいをたくさん飲むと元気な子になるかもって思ったんだよね。
ハハがお仕事に戻ったら、珠季は保育園に元気に行けるほうがいいしね。

それから、赤ちゃんって一度にたくさん寝られなくて夜も起きちゃうんだけど、
だから夜もおっぱいを飲むのね。
でもいつもハハのおっぱいを上手に飲めないから、
珠季もハハも疲れて来ちゃったの。

それで、また産まれた病院に行って、おっぱいの先生に相談にいったんだ。
そうしたら、おっぱいをあげるときの抱っこの仕方とか、どっちのおっぱいからあげるかとか、
いろいろ教えてもらえて、ようやくちょっと飲めるようになったんだよ。

ハハはよかったーって思って、おなかもぺこぺこだったから、
病院の帰りにハンバーガーを食べたの。珠季もよかったーって思ったのか、
いつもよりたくさん寝たんだよ。だからハハもおうちに帰ってお昼寝をしたんだ。
ふたりでぐーぐー寝たの。

これで安心かなって思っていたら、
夜、ハハはすっごく高いお熱が出て来ちゃったの!
おっぱいもすごーく痛くなって、せっかく飲めるようになったと思ったのに珠季もやっぱりあんまり飲まないし。

ハハがお薬をのまなくちゃいけなくなったら、
おっぱいにもお薬がでてくるから、珠季におっぱいをあげちゃだめなのね。
それも心配だった。

「乳腺炎」っていう病気のこと、
ハハはお母さんになったばっかりだったから、ぜんぜん知らなかったんだ。
おっぱいがたくさん出過ぎたり、どろどろになったり、赤ちゃんがあんまり飲まなかったりして、つまっちゃうのが乳腺炎。

そうなるとおっぱいがおいしくなくなるから、余計飲まなくなるんだって。
ひどくなると手術をしないといけないんだよ。
珠季はハハが抱っこしないと泣いちゃうから、入院とかになったら大変だって思った。

ハハはまた赤ちゃんの珠季を連れて、
お熱でふらふらだったけどがんばって病院に戻って、
先生に治してもらったの。

これがまた痛くて大変だったんだけど、
そこではじめて乳腺炎のことを教えてもらったんだ。
甘いもの、辛いもの、油がいっぱいのもの、
牛乳とかバターとかチーズとかクリームを使ったもの、パン、パスタ、おもち、フルーツも、
なるべく食べちゃだめって言われて、本当にびっくりした。

そうなると食べていいのは、
野菜と、さっぱりしたおかずと、ごはんと、スープくらい。
でもこれでおいしいおっぱいになるんだって。

ほんとかなー?って思ったけど、もうお熱も痛いのもいやだし、だめなものは我慢したよ。
そうしたらやっぱりおいしいおっぱいになったのかもしれない。
珠季は上手にごくごく飲めるようになったよ。

それでどんどん大きくなって、もっとごくごくいっぱい飲むようになって。
珠季は「もっとのみたいよー!」って言ってるみたいになったよ。
そうすると、ハハのおっぱいもいっぱいでるようになった。
いっぱいのんで寝ちゃうときは、しあわせー♡っていう顔をしてたの。
珠季は今でもホットミルクで「はーしあわせー」って言うでしょ?赤ちゃんのときからなんだよ。

それからも、乳腺炎にならないように、おっぱいをあげている0歳の間は、
すっごく気をつけてたんだ。
とんかつ屋さんに行っても一口だけにして、
その後は珠季におっぱいをたくさん飲んでもらったり、
レストランのデザートもチチにあげたりしてた。
コーヒーにミルクは入れなかったし、パンにバターも塗らなかった。
維吹のときも、ハハ、アイスとか食べなかったの覚えてるでしょ?

それでもたまに乳腺炎になりそうにはなったけど、
それほどひどくならずに、ずっとおっぱいだけでミルクは足さずに赤ちゃんの珠季と過ごせたの。
その時は何とも思ってなかったけど、
保育園に入る時には先生に「全部おっぱいにしてたなんて、ハハがんばったね」ってほめられたんだよ☆

珠季のおっぱいが終わって、ハハもなんでも食べられるようになったけど、
乳腺炎で食べないほうがいいものっていうのは、
今でもなんとなく気になるようになっちゃった。
もともと、クリーム味のものは大好きだったんだけど、
身体にいいってわけじゃないな、とか思うようになった。おいしいけどね。

それでやっぱり、ごはんとおかずとお味噌汁とっていうごはんが、
一番安心だなーって、思ってるんだ。珠季はそういうごはん系のメニューがいちばん大好きだよね。

おっぱいの味が、そういうごはんだったからかもしれないよ。
いつも「おーいしー!」って言ってくれるし、ごはんも「たまきがやるー!」って炊けるようになったし、
ハハもごはんのおかげで嬉しいことがいっぱいあるよ。こんどはお味噌汁をじぶんで作れるように、練習しようね。