{ 台所からの手紙 }2013.06.16

Vol.030 離乳食の本とスプーン

珠季が赤ちゃんのとき、
生まれたばかりだから何もできなくて
お世話はいろいろやることがあったけど、
次はこんなこと出来るかな、こんなこと一緒にやってみよう、って
ハハにとっても、どんどん新しい世界がひろがっていったよ。

特に楽しみにしていたのは、離乳食。
まだなんにも食べたことのない珠季に、
ひとつひとつ、いろんな味をおしえてあげて、
最後には一緒に食べられるようになるなんて、
考えるだけでほんとうにわくわくした。

病院で健診の待ち時間によくみていた
赤ちゃん雑誌なんかにも離乳食のことは載っていたけど、
せっかくだから、信用できる教科書として1冊買って、
ハハなりの軸を持って、ちゃんとやろうって思ったの。

ハハは生まれて3か月くらいの珠季をベビーカーに乗せて、
大きな本屋さんに行ったよ。
いろんな本があるから比べて、これだって思うのを
選びたかったんだ。
本の方針が厳しすぎずミーハーすぎず、
栄養の勉強もできて、
何か月でどういう食材をどういう調理法で食べたら
いいかがわかりやすくて、
保存の仕方もいろいろ工夫があって、
写真もあって、おいしそうで、
スタイリングもかわいくて、
病気の時とかアレルギーのことも載ってて、
おとなの取り分けで注意することも書いてあって。

珠季が寝ている間に検討して、1回では決められなかった。
何回か本屋さんに足を運んで、これだっていう1冊を決めたの。

買ってからは、すみからすみまで読んだよ。そして準備開始。
離乳食用の特別な道具はそろえなかったけど、
フリージング用にかわいい製氷器を買ったり、
小さい茶こしを買ったりした。
そうそう、そのころ実家に行ったら、
赤ちゃんスプーンをだしてきてくれたの!
かわいいし思い出がいっぱいだから、
とっておいてくれたんだって。
持つところが丸くなっているあれ、
ハハも赤ちゃんのとき使っていたんだよ〜!

5〜6か月くらいになって、赤ちゃんが興味をもっていたら、
いいタイミングでお粥から離乳食をはじめてください、
っていうのがよく言われるやりかた。

それくらいにならないと、赤ちゃんがちゃんと消化できないんだよ。
でもハハは早く始めたくて、5か月になるのをうずうず待ってた。
…というか、待ちきれずに、果汁をちょっぴりとか、
お出汁をちょっぴりとか、野菜スープをちょっぴりとか、
あげてたけど。
素材の味があると珠季はびっくりして、いろんな顔をして、
それもかわいくて楽しかったな。

いよいよ離乳食をはじめてみたら、
珠季はとっても興味をもって、
いろいろ食べてほしいハハの期待に
食欲いっぱいでこたえてくれた。
いっぱい食べる子には、っていうページもよく開いたな。

離乳食のはじめのころ、珠季はスプーンを持ちたいから、
結局あの赤ちゃんスプーンだけでは足りなくって、
必ず、右手用、左手用、ハハ用、落としたとき用で、
4本くらい準備してた。

いつもの本をみながらおかゆやじゃがいもをつぶして、
スプーンが熱くなっちゃって冷ますのもいつものこと。
ぱくって食べてくれるお口、
スプーンを握って離さないちいさい手、
考えながらもぐもぐしているところ、
ごっくんしてにっこりした顔、
食べ疲れて寝ちゃうことも多かったね。
こういうたくさんの思い出をハハはぜったい忘れないけど、
珠季はもう覚えてないよね。
ハハだって、自分の赤ちゃんの頃はもちろん忘れちゃってる。

珠季がお母さんになるときがあったら、
あの本とスプーンを渡してみようと思うよ。
スプーンは使えるかな。
本は古くさくなっちゃってるかもしれないけど。

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