マガモのオスとメス

{ 食にまつわるお話 }2021.02.28

あまり話題にならない鳥インフルエンザのこと

マガモのオスとメス
一年中池にいるような気がするカモですが、マガモは渡り鳥。そしてカモ類は鳥インフルエンザの自然宿主なんだそうですよ、びっくり。


昨年秋から、ちょこちょこと「○○県の養鶏場で鳥インフルエンザが発生」というニュースが報道されています。先日は、白鳥が池に浮かんでいる映像とともに報道されていましたから、記憶にある方も多いかもしれません。大きな被害が出ているにも関わらず、あまり報道されていないような気がするので、少し調べてみました。

どこかの池から引っ越しするたびにニュースになったり、一年中川や池に浮かんでいるような気がするカモですが、それはカルガモという留鳥(日本からどこにも移動しない鳥の名称)です。俗に青首と呼ばれるマガモや、小さくてかわいいコガモなどは、毎年ロシア方面から飛来し、夏になる前にまた帰っていく渡り鳥。そしてこれらの鳥の飛来とともに鳥インフルエンザウイルスが日本にやって来ます。

昨今あちこちで猛威を奮っている鳥インフルエンザは、高病原性鳥インフルエンザと呼ばれます。採卵鶏だけでなく、肉用の鶏、あひるなども何万羽と処分されています。保険による保障があるのでしょうが、発生するとすべての鳥が殺処分ですから、どれほどの経済的損失があるのかまったく想像もつきません。ニュースでは淡々と「発生しました」という報道がされていますが、もしかして風評被害に配慮されてるのかしらんと思ったりします。

高病原性鳥インフルエンザ


2009年、ほとんどのヒトが抗体を持っていない「新型インフルエンザH1N1」が流行し、大騒ぎになりました。わたしはこの時に初めて「パンデミック」という言葉を聞き、緊張しましたが、症状がそれほど重くないことがわかってホッとした記憶があります。この時少しだけ話題になったのは、高病原性H5N1型鳥インフルエンザが、鳥からヒトへ感染したという事件でした。

そもそも鳥インフルエンザはヒトに感染することはないと考えられていました。が、なぜか、中国で、H5N1型鳥インフルエンザが人間に感染したのです。大量のウイルスに暴露したこと(鶏のフンを大量に吸い込むなど)が原因と考えられていて、衛生面で完璧な日本でこのようなことは起こらないと言われます。

鳥から人への感染が可能になったこれらのウイルスが感染したヒトの体内で変異し、ヒトからヒトへの感染が起きると、再び新型インフルエンザのパンデミックになる可能性があります。新型コロナウイルスで、世界にこれほどの打撃を与えることができるのですから、新型インフルエンザの衝撃はいかばかりか。これからも永遠に変異しないでほしいと願っています。

12月18日の日経新聞によると、11月15日時点での鳥インフルエンザによる殺処分の頭数は、約330万羽と過去最高になっています。農水省のサイトで高病原性鳥インフルエンザの進捗状況という発生場所と頭数の記録を見つけたので計算してみたら、9,574,140羽というとんでもない数字になっていました。これほどの鳥の命を奪うとは、大変な事態です。

小さな養鶏場から大規模養鶏場まで鳥インフルエンザが猛威を奮っています。この件はもう少し報道されてもいいんじゃないのかなと思いつつ、殺処分された鶏やそれを見ているしかない養鶏場の方々のことを時々考えています。

(手島奈緒)