{ 台所からの手紙 }2013.01.13

Vol.010 おねいちゃんになった日のお弁当

秋なのに少し暑いくらいの朝だった。
君は幼稚園の遠足でコスモス畑にいく日で私はお弁当を作っていた。
幼稚園に入ってからお弁当は残したことがなく、
いつも「お弁当、からっぽー」と言って帰ってきた。

臨月で予定日を1週間も過ぎていた私は、
早朝からの軽い陣痛をこらえながらお弁当を作っていた。

きっと君が遠足から帰ってきたら、おねいちゃんになっているだろう。
なんて思いながら・・・。

おかずは君のすきなウインナーと
さつま芋をマッシュしバターの風味をきかせた巾着。
きっとお弁当箱は空っぽで帰って来るだろうって思っていた。

君を幼稚園まで送り、そのまま産婦人科へ。
あいかわらず微弱陣痛で産まれたのは3時頃だった。
夕方、君がおばあちゃん達と病院に来た。

その時におばあちゃんから聞いた。
「お弁当、ほとんど食べなかった」って。

お母さんが自分だけのお母さんじゃなくなるって思ったのか。
どうなのか。なんだかせつなくなってしまってね。
もうあれから18年もたつのに思い出すんだ、あの日のせつなさ。
そういえばさつま芋の巾着、あれから作っていないかもね。

ここに1枚の写真がある。妹が産まれてすぐ出かけた時の写真。
ちょっぴり元気のない君の姿が写ってる。
君がおねいちゃんになって、私がふたりの娘の母になった頃の写真だ。