{ 台所からの手紙 }2013.02.25

Vol.019 美味しくないお味噌汁

子ども達が大きくなり子育てがひと段落してくると、
進行形で子育てしているお母さん達に
「子育てはあっという間だから今を楽しんでね」
と心の中でつぶやいています。
子育て中はほんとうに大変で自分の時間もありません。
そんな忙しいママ達が時間を作って通ってくれる
From Kitchenのお料理教室「毎日のやさしいごはん」。
春奈さんは小学生と幼稚園、赤ちゃんと3人のお子さんのママさん。
一番小さい赤ちゃんを連れてお教室に通ってくれています。
今日は春奈さんからわが子へ贈るお手紙です。



「お味噌汁、おいしくない」
そういって、君たちは、お味噌汁をよそわなくなったね。

日本人は、お米とお味噌汁がいい、
と私は思っているので、途方にくれたよ。

しかも、お味噌は、私が作って、一年寝かせたもの。

赤ちゃんの君を連れてスーパーに買い出しに行くのが大変だったから、
戸別配達をしてくれる生協に加入したの。
食に対して、意識を向ける、ということを生協のカタログで知ったよ。

冬になると、味噌づくりの特集が組まれてね、
おうちでお味噌が作れますっていうの。
私ね、すごくびっくりしたんだよ。
お味噌はお店で買うもの。工場で作るもの。こう思っていたから。

簡単に作れる。
うちの味の味噌が作れる。
ワクワクしながら準備したよ。

一晩水につけた大豆は、大きくなる。
当然、豆の量が多くなる。
一度に煮れるお鍋がなかったので、
圧力なべ、保温なべ、普通のお鍋、全部を駆使してどんどん煮ていった。
台所は、煮えるお豆のいいにおい。

煮えたら、つぶすんだよ。
フードプロセッサを持っていなかったから、手作業。
マッシャーや小さいすり鉢を使ってみたり、ビニール袋に入れて、
上からつぶしてみたり。

そのあとは、塩と麹を混ぜ合わせて、お団子を作って甕に詰める。
混ぜ合わせるのも、大量だったから、大変。
大きいホットプレートでも間に合わなかった。

単純作業ながら、なれない一人作業は大変だった。
けれど、君たちが喜んでくれるだろう、
おかわりしてくれるだろう、そう思って、がんばったんだよ。

だから、とってもとっても、悲しくもあった。


ある時、だしを変えてみた。
だしパックではなく、
昆布と削り節で、だしをとってみたの。

そんなだしの取り方は、やったことが無かったし、
きっと難しくて、私には、無理だと思ってたんだ。

でもね、やってみたら、驚くほど簡単だったの。


調理中から、だしのいいかおりがしたね。

食卓に上がった、お味噌汁の鍋。
いいかおりがするけれど、君たちは、よそおうとしない。

味見だけしてみて。
私のお願いを聞いてくれたね。

ちょっとだけよそって、食べた…

「おいしいね、このお味噌汁!」
そういって、たっぷりよそって、おかわりまで。

うれしかったな。

おいしいものは、おいしいってわかるんだね。
確かに、今までのお味噌汁は、おいしくなかったね。
おいしいてづくり味噌でも、だしがおいしくなかったり、
量が多すぎたり、煮立ててしまったりしたら、おいしくないものだね。
お母さん、知らなかったよ、気づかなかったよ。


おいしくて、やさしい食事で、君たちの身体を育ててあげたいよ。
本当においしいものをおいしいと感じる味覚を育ててあげたいよ。

そう思いながら、明日もお味噌汁をつくるね。