{ 台所からの手紙 }2013.04.28

Vol.026 ぎゅーにゅーとーにゅー

珠季へ

珠季は6か月のとき、アレルギーってわかったの。
アレルギーの食べものは、ミルクと卵とピーナッツ。
病院の先生と相談して、
離乳食のあいだは除去食でいこうってことになったよ。
ミルクと卵とピーナッツをぜったい食べないようにして、
そうしている間に、珠季の体が、
食べても大丈夫になるのを待つの。

このときからハハの豆乳研究がはじまったよ。
お料理に使うとむしろけっこうおいしいものもあったし、
牛乳をあげるより、いいかもしれないって思うようになった。
それから、珠季が好きなお豆腐ホワイトソースも、
このときに編み出したお料理なんだよ。
卵と牛乳をつかわない蒸しパンとかも、いいよね。
それから、ロングライフの豆乳を買っておけば
便利だなってことも、このときわかったこと。

だからアレルギーのおかげってことも、いろいろあるんだ。
でもやっぱり、おやつなんかいつでも手作りできるわけじゃないし、
危険な食べものが身近にいっぱいあるのはこわいから、
アレルギーがなおるに越したことはないんだけど。

おとなになるまでずっと、食べられないかもしれない。
でも案外すぐ、なおるかもしれない。
半年ごとに調べましょうってことになった。

ここでちょっとよかったのは、珠季が注射が得意ってことだね。
血をとって検査するんだけど、
珠季は赤ちゃんの時からぜったい泣かないから、
ハハが珠季をかわいそうだなあって思う気持ちも、
少なくなったよ。注射が得意で、珠季はすごいなあって。

1歳をすぎて検査した時は、ちょっとは良くなったけど、
まだ食べちゃだめですっていう結果だった。
保育園には珠季用の豆乳を、
おむつやお着替えと一緒に持って行ってたの。

1歳6か月でまた検査してみたよ。
そうしたら、もっと良くなって、
火をとおした卵と、少しの牛乳なら飲めることになったんだよ!
わーい!

牛乳は、保育園の時間は300ml以内にしてください、って、
お医者さんからの「指示書」を保育園に持って行ったよ。
給食で牛乳を使った献立もあるし、ごはんのときの飲みものは、
保育園の先生たちが様子を見て決めてくれてたんだ。

うちでは、様子を見ながらちょっとずつあげてくださいねって、
病院で言われてたの。
その頃にはハハも、牛乳を使わないことに慣れて、
豆乳もいいなって思っていたから、
牛乳も豆乳もアリで、選択肢が増えたってかんじだった。

飲みものをどうするか、今もそうだけど、
だいたい珠季と相談して決めることにしたよ。
「牛乳にする?豆乳にする?」って。
「ぎゅーにゅー!」とか「とーにゅー!」とか、
1歳の珠季なりに、飲みたいものを答えてくれてたよ。

あるとき、珠季の答えが
「ぎゅーにゅーとーにゅー!」だったの。
「牛乳?豆乳?どっち??」って聞き返したけど、やっぱり
「 ぎゅーにゅーとーにゅー!」。
もしかしてまぜるってこと?って聞いたら、うん!って。

まぜるってのは、ハハは思いつかなかったんだよね〜。
珠季が考えたことなの。子どものほうが、いいこと考えつくよね。
びっくりしたけど、言われたとおりまぜてみると、
牛乳くささと豆乳くささが、打ち消し合うってかんじ。
なかなかいいんだよね!
珠季はその頃は味がすごくよくわかるようになってたから、
そういうの思いついたのかもね。

今でもぎゅーにゅーとーにゅー、飲むよね。
この飲みものは、うちだけの、深い味わいなんだ。