{ 台所からの手紙 }2014.11.16

vol.037 おいしいがわかる心はね…

お母さんにお母さんがいた頃はね。


ごはんだよーって呼んでもらうのはあたりまえで。
いただきまーす、おいしいー、それからおしゃべりして笑って。
お母さん、なんにも心配なことなくて、安心で、幸せでした。



けれど、お母さんのお母さんはある日天国へ行ってしまって。
お母さんの心はぺしゃんとつぶれたの。



あたりまえって思ってた、毎日のごはんがあたりまえじゃないってこと。
それがどれだけ幸せだったのか、やっとやっと、気づいたの。

それからは、何を食べてもおいしいと思わなくなりました。



みんな、覚えておいてね。

おいしい、がわかる心は、幸せな心。
幸せじゃない心は、おいしい、がわからなくなってしまうの。



そんなお母さんに、またおいしいを思い出させてくれたのは、お父さんとあなたたち。
次々生まれてきてくれたみんなが、お母さんの心にまた灯をともしてくれたの。



みんな、生まれてきてくれてありがとう。
お母さん、みんなといただきますって言って、おいしいねって笑えて、幸せです。



お母さんのお母さんとおばあちゃんがくれた幸せを、
今度はわたしがあなたたちに届けよう。



いやなことがあっても。
つらいことがあっても。
ごはんを食べて、おいしいって思って、元気になって、
明日はまたがんばれますように。



お母さんはそんな想いで、今日もお料理しています。

長野京子

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