{ 食にまつわるお話 }2019.09.18

野菜や果物に農薬はどれぐらい使われているの?

単位面積当たりの農薬散布量を調べてみたら

出荷データ 2018農薬年度出荷実績(農薬情報局)から計算した2018年の農薬出荷量

日本ではどれぐらいの農薬が使われているのでしょう。2018農薬年度出荷実績(農薬情報局のWEBサイトhttps://www.jcpa.or.jp/labo/data.html)のデータから計算してみると、日本で一番使われている農薬は除草剤で、出荷量全体の36%を締めています。次が殺虫剤で33%でした。高温多湿の日本で殺虫剤が多いことは理解できますが、除草剤のほうが多く使われていることに少し驚きます。農家の高齢化・大規模化に伴い、手除草などはますますむずかしくなっているということでしょう。

図1
図1 社会実情データ図録より「単位面積当たりの日本の農薬使用量」

出荷量のみではイメージできないので、単位面積当たりの日本の農薬使用量を調べてみました。古いデータしかないのですが、社会実情データ図録(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/index.html)によると、2010年では世界第二位となっています。一位は中国、二位はもしかしたら今では韓国になっているかもしれません。東アジアの国々は気候的に農薬の使用量が多くならざるを得ないということでしょう。日本の使用量は年々減少していますが、たんに耕作面積の減少の影響かもしれません。が、いずれにしても多い印象です。

どんな農薬が使われているか、消費者にはわからない


さて、農薬はどのように使われているのでしょう。ひとつの目安となるのが「防除暦」と呼ばれるものです。これは、その地域の病害虫対策の農薬散布カレンダーで、農家はこの防除暦に即して農薬を購入し、散布しています。防除暦は一般人には見ることはできませんから、どのような農薬がまかれているかは不明ですが、散布数を調べる方法はあります。

インターネットで「県名 特別栽培農産物基準 慣行栽培」と入力してみてください。各県の「特別栽培農産物基準」から慣行栽培で使用される農薬の成分数を見ることができます。成分数は散布回数ではないので、その数通り散布されているわけではありませんが、数字を見るだけでもなんとなく実感できます。それぞれの作物の栽培期間と成分数で推測すると、だいたい1週間から10日に一度まかれている計算ですから、栽培期間が長いものほど散布量が多くなります。

農薬って何回くらいまかれてるのかなーなんてわたしたちが想像する散布回数は、だいたい3~5回くらい。それよりもかなり多めの農薬が散布されていると考えていいでしょう。

農薬数が多い理由は農家のせいだけではない


高温多湿な日本の気候では、病虫害による出荷減などを防ぎ、作物を安定供給するため一定程度の農薬は必要だと思います。しかし日本の場合は、みための美しい野菜を栽培するために農薬が使用されているという側面があります。日本の消費者は野菜も果物もみための良さ(虫食いがない、色がきれいなど)に価値を見出し、そうでないものは好まない性質があります。したがって、出荷規格がかなり厳しく運用されているのが現状です。そして、そういう作物を栽培するためにも農薬は必要になるのです。

日本の農薬使用量が多い理由は農家だけではなく、虫食いひとつ許さない、世界一見た目にうるさい日本の消費者にもあるのかもしれません。わたしたちは作物の何に価値を見出すべきなのか。今一度考えてみることが必要かもしれません。

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コラム 手島 奈緒

株式会社大地(大地を守る会・現オイシックス・ラ・大地)で編集・広報・青果物仕入れなどを担当し、
おいしいものばかり食べていたせいかおいしいものが大好き。
2010年よりフリーランスライターとして農と食についての情報を発信中。

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