{ 食にまつわるお話 }2019.10.25

意外と知らない酢の材料と作り方について調べてみました。

毎年しそジュースを作るのですが、しそジュースにはさわやかな香りのリンゴ酢や、個性の薄い穀物酢が向いています。酢にも料理の向き不向きがあるのですねー。


素材の味をふくらませ、うまみを与え、保存性も高めてくれる「酢」。酢は、食卓になくてはならない調味料ですが、スーパーに行くと、米酢、純米酢、穀物酢、黒酢など、さまざまな酢が並んでいます。それぞれ何が違うのか、よく考えるとあんまり知らない、そんな酢のことをいろいろと聞いてみました。取材先・全国食酢協会

酢はどうやって作られているの?


穀物や果物などのデンプンからまず酒(アルコール)を作り、それを酢酸発酵したものが酢です。自家製ワインを作ったら知らない間に酸っぱくなった、なんてことがよく起こりますが、これは、ワインに酢酸菌がとりついて発酵してワインビネガーを作ったということ。この場合、アルコールの原料となったのはぶどう(ワイン)なのでワインビネガー、原料が米なら米酢、リンゴならリンゴ酢になります。

その他、純米酢、穀物酢、黒酢など、酢にもいろいろな種類があります。酢の原材料表示欄を見てみると、名称(米酢とか純米酢とかリンゴ酢とか)と、原材料、酸度(酸っぱさのおおまかな目安)などが書き込まれていて、原料や酸っぱさがわかるようになっています。この表示にもいろいろなルールが決まっています。

たとえば「米酢」と表示できるのは1リットル当たり40g以上米を使って作った酢で「穀物酢」も1リットル当たり穀物を40g使っていれば「穀物酢」と表示できます。それがどうしたと言われそうですが、実は1リットルあたり40gの穀物では酸度4の酢はできません。酸度は酢の元になるアルコールの度数と同じ。つまり、酸度4の酢を作るには、アルコール度数も4度必要ということなのですが、40gでは少なすぎて4度にはならないのです。

ということで、足りないアルコール度数を上げるために「醸造用アルコール」が添加されています。これが米酢や穀物酢の原材料欄に「アルコール」と書いてある理由です。アルコール度数を高めるにはもうひとつ「高酸度ビネガー」を混ぜるという方法もあります。

「高酸度ビネガー」は主に加工食品原料に使われていて、酸度が10~15%と高く、少量でも酸っぱいのが特徴です。高酸度ビネガーが添加されている場合も、原料表示上は「米、アルコール」になります。そのため、表示からは高酸度ビネガーが使われているか、アルコールが使われているのかはわかりません。

アルコール添加のメリットは、少ない原料で酢ができること。したがって、アルコールが添加されている酢はお値段が安くうまみは薄くなります。逆に、個性がないのでどんな料理にも使えるというメリットがあります。

お米だけで作った酢は「米酢」ではなく「純米酢」


きゅうりの酢の物の味を決めるのは「酢」です。純米酢や黒酢など、うまみの強いものを使えば使うほどおいしい酢の物ができます。酢の力を感じる一品です。

「アルコール添加せず原料がお米だけ」という酢は「純米酢」と呼ばれます。なんだかお酒みたいですね。純米酢は使う米の量が多いため、お値段も高めです。では、純米酢は1リットルあたりお米を何g使っているのでしょう。

「富士酢」で有名な飯尾醸造さんのWEBサイトを見ると、純米酢には1リットル200g、富士酢プレミアムには320gもの米が使われています。320gというと米酢(40g)のなんと8倍の量です。だからおいしいんですねー。

ちなみに中華料理などによく使われる黒酢は、原料が米のものと大麦黒酢という大麦のみのものがあり、どちらも原料を1リットル180g以上使わなくてはならないそう。黒酢がおいしい&お値段も高いのはこういう理由なのですね。

気になる醸造法(静置発酵と連続発酵)の違いは?


酢には「静置発酵」と「連続発酵」というふたつの発酵方法があります。よく「静置発酵」のほうが大手メーカーの連続発酵(速醸法などとも呼ばれます)のものよりも味がいいと言われます。これはほんとうなのでしょうか・

酢を生み出す酢酸菌は「好気性菌」という空気が大好きな菌のため、機械で強制的に空気を送り込むと発酵が早くなります。これが大手メーカーの方法「連続発酵」で、なんと数日で酢ができあがるのだそうです

一方、酢酸菌を入れてそのまましずかーに置いておき、自然な対流で発酵させるのが「静置発酵」。こだわりの酢を作っているメーカーなどでこの方法が採用されています。静置発酵は酢になるまでに数か月かかり、さらに熟成させたりもするため、大量生産には向いていません。

静置発酵中の酢の表面。酢酸菌が膜を張っています。酒よりも酢のほうが重いため、酢が下に移動し酒が上がるという対流が自然に生まれ、じょじょに酢になっていきます。

連続発酵の酢は大きなタンクで大量に作れますから安価ですが、静置発酵の酢は時間がかかることもあって高価になります。味の違いが気になるところですが、以前ミツカンミュージアムで質問してみたら「発酵法では味は変わりません。酢の味を変えるのは原料です」とおっしゃっていました。

もしかしたら「静置発酵だからおいしい」のではなく、原料となる米の量や質によって変わる、その味を最大限にいかす醸造法が「静置発酵」だから、静置発酵でできた酢はおいしい、ということなのかもしれませんね。

うまみの強い純米酢や黒酢は、酢の物やぎょうざのタレなど、酢の味が完成品の味を左右する料理に向いています。リンゴ酢はさわやかな風味と香りを生かしてドレッシングなどに、個性の薄い穀物酢は、果実を漬け込んだりしそジュースにしたりと、どれがいいとか悪いとかではなく、それぞれの特性を生かした楽しみ方があります。どれか一種類! と決めつけるのではなく、いろいろと試してみるのがいいかもしれませんね。

食酢の表示についての詳細は「食酢の表示に関する公正競争規約及び施行規則」
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/026.pdf
ミツカンミュージアム
https://www.mizkan.co.jp/mim/

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コラム 手島 奈緒

株式会社大地(大地を守る会・現オイシックス・ラ・大地)で編集・広報・青果物仕入れなどを担当し、
おいしいものばかり食べていたせいかおいしいものが大好き。
2010年よりフリーランスライターとして農と食についての情報を発信中。

WEB ほんものの食べものくらぶ https:/hontabe.com
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