{ 食にまつわるお話 }2019.11.12

丸大豆醤油と脱脂加工大豆の醤油、何が違うの?

毎日の調味料としてなくてはならない醤油。醤油の原材料は、大豆と小麦、塩が基本ですが、原材料の表示欄を見てみると、「丸大豆」はわかるけど「脱脂加工大豆」??? さらには、ステビアや糖類などと書いてあります。醤油になぜこんなものが必要なの? ということで、昔ながらの杉桶仕込み醤油を作っているお醤油やさんに聞いてみました。


お話を聞かせてくださった安来市の大正屋醤油さんの杉桶。杉桶は今はもう作る人がいなくなっているため、この桶も廃業した醤油蔵などから引き取ったそう。なので、蔵の桶は全て大きさが違っていました。

醤油とはいったいどのようなものなのか


日本における醤油は日本農林規格で以下のように定められています。※JASマークを添付しないでも、醤油を販売することは可能です。
https://www.soysauce.or.jp/gijutsu/pdf/kikaku_33.pdf
一般財団法人日本醤油技術センターのサイトのほうがわかりやすいかも。
https://www.soysauce.or.jp/gijutsu/jas/top.html

JAS規格では入れてもいい食品添加物なども詳しく決まっていますが、そもそも「醤油」の定義が非常に広いのに驚きます。たとえば、一部を抜粋するとこんな感じです。

『「1 大豆(脱脂加工大豆を含む。以下同じ。)若しくは大豆及び麦、米等の穀類(これに小麦グルテンを加えたものを含む。)を蒸煮その他の方法で処理して、こうじ菌を培養したもの(以下「しょうゆこうじ」という。)又はしょうゆこうじに米を蒸し、若しくは膨化したもの若しくはこれをこうじ菌により糖化したものを加えたものに食塩水又は生揚げを加えたもの(以下「もろみ」という。)を発酵させ、及び熟成させて得られた清澄な液体調味料(製造工程においてセルラーゼ等の酵素(たん白質分解酵素にあっては、しろしょうゆのたん白質を主成分とする物質による混濁を防止する目的で生揚げの加熱処理時に使用されるものに限る。)を補助的に使用したものを含む。以下「本醸造方式によるもの」という。)』(日本農林規格より抜粋)

このほかに2、3と続き、さらに、使っていい食品添加物、たとえば、甘味料としてはカンゾウ抽出物、サッカリンナトリウム、ステビア抽出物及びD-ソルビトールなどを使ってもいいことになっています。「醤油」の原材料はとても幅広いものなのですね。

丸大豆醤油と脱脂加工大豆、違いはチッソ含有量



お醤油をしぼったあと一度洗浄した杉樽。次回仕込むときにまた洗いますが、ふちのあたりに、菌というか、なんかたくさんついてます。これがおいしい醤油を生み出すのかも。ちなみに醤油は食塩量が多いため、雑菌が繁殖しにくいのだそうです。

醤油の主原料は大豆です。「丸大豆」はまるごとの大豆ということでわかりやすいのですが「脱脂加工大豆」が使われている場合があります。脱脂加工大豆とは、油を搾ったあとの大豆のことです。

脱脂加工大豆で醤油を仕込むと、丸大豆醤油よりも完成品のチッソ含有量が高くなるというメリットがあります。そのため、日本農林規格で定められている適正な量まで水で薄めることが可能です。水で薄めたぶん味が薄くなりますから、アミノ酸や糖類などの食品添加物で味を整えます。

もうひとつのメリットは「安価」なこと。原料費が安いと醤油の価格も安く抑えられますものね。脱脂加工大豆は、油脂原料の副産物の有効活用=エコではありますが、醤油の香り、うまみなどについてはどうしても薄っぺらい気がします。数値では測れない何かがあるということでしょう。

仕込容器で味が変わる? 杉桶仕込のおいしさの秘密


醤油といえば木桶というイメージがありますが、一般的な醤油は、FRPと呼ばれる強化プラスチックの桶を使って作られています。FRPと杉桶では何が違うのでしょう。

醤油の原料は大豆と小麦と塩です。仕込む容器がどんなものでも、この原料に麹菌や乳酸菌、酵母を添加し、発酵して醤油ができる、というしくみは同じです。FRPで仕込む場合は、決まった菌を使い、製造工程が機械化できるため、安定した食味の醤油が大量に生産できます。大手メーカーのWEBサイトでは、製造期間は約半年となっています。

杉桶の場合、長年の使用で杉桶に菌が住み着いていますから、原料を入れるとその菌も動き始めます。木桶仕込みの醤油蔵で、小さな櫂一本で桶の醤油を撹拌している風景が見られますが、この櫂の入れ方や速度などで香りが変わるそうです。一日一度、人力で撹拌されつつ、醤油は杉桶のなかでのんびり発酵します。できあがるまでにかかる時間は約一年半。なんと、大量生産の醤油の3倍です。

杉桶仕込の醤油のメリットは「香り」です。香り成分はさまざまな微生物によってつくられるため、大手メーカーの管理された製造工程でできあがる香りはどうしても画一的になります。というか、それが「安定した味」なのですが。一方、杉桶仕込みの醤油には、添加される菌のほか、桶に住み着いている菌の影響もあり、多様で複雑な香りが生まれます。

わたしたちが感じている「味」は「香り」による部分が大きいため、香り豊かな醤油ほどおいしく感じます。杉桶仕込みの醤油がおいしい理由は、香りの多様性による、ということのようです。

醤油の香りは日本料理の味の決め手。自分好みの醤油を見つければ、シンプルな味付けでも夢のようにおいしい料理ができあがります。日本古来の調味料、醤油の底力をぜひ試してみてください。

取材した大正屋醤油さんは地元の大豆と米を使って醤油を仕込んでいます。
http://www.taishoya.jp/

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コラム 手島 奈緒

株式会社大地(大地を守る会・現オイシックス・ラ・大地)で編集・広報・青果物仕入れなどを担当し、
おいしいものばかり食べていたせいかおいしいものが大好き。
2010年よりフリーランスライターとして農と食についての情報を発信中。

WEB ほんものの食べものくらぶ https://hontabe.com
BLOG ほんものの食べもの日記 https://hontabe.blog.fc2.com/


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