{ 食にまつわるお話 }2019.11.30

「赤くなると医者が青くなる」のはトマトよりりんごより柿!

柿の歴史は古く、古事記や日本書紀にすでに記載があるそうです。古い作物のためか、日本中にさまざまな種類の柿があり、渋いもの、甘いもの、それぞれ食感、味が違います。とくにビタミンCの含有量が高く、リコピンやカリウム、食物繊維の一種ペクチンも多いため、「赤くなると医者が青くなる」作物でもあります。が、りんご、トマトと比べて、栄養価的には柿がダントツかもしれません。お医者様も青ざめる、そんな柿のことを書いてみました。

庭先では無農薬でもきちんと作るには農薬が必要


この時期、あちこちの庭先で柿が色づいています。庭先にいくらでもなってるので「無農薬で作れますよね?」なんて言われることもあります。しかし、経営的に成り立つ商品にするためには、きちんと農薬をまく必要があります。

庭先の柿が早々と葉を落としてしまうのを見て「秋だわねー」などと思う人が多いのですが、実は落葉病という病気に罹患して葉を落としていることのほうが多いもの。その病気にかかると葉っぱがどんどん落ちてしまうため、柿がきちんと熟してくれません。また、早々に葉を落とす=光合成がじゅうぶんにできないので、柿の味も悪くなります。

お店にカリカリの柿が売っているのに、庭の柿が早く熟してぼとぼと落っこちてるのを見ては「今年は熟すのが早いわねー」なんて思う人もいますが、それは熟すのが早いわけではなく、害虫のせいかもしれません。俗に「ヘタ虫」と呼ばれるその虫の本名は「カキノヘタムシガ」と言います。これがつくと、ヘタの部分を残してぼとぼとと落っこちるので大変です。

というように、食味も見た目もいい果実を収穫するためには農薬が必要になります。和歌山県の特別栽培農産物基準の慣行栽培成分数を見てみると、富有柿が17成分、その他の柿が16成分でした。だいたい2週間から10日に一度まく、というような感じでしょうか。りんごや梨に比べれば少ないのですが、それでも農薬は必須なのですね。

甘柿と渋柿、不完全甘柿、3種類の柿

 

自分の手で日々もんで手づくりする干し柿も楽しいものです。どんなふうに干し上がるか毎日楽しみで、渋いうちから食べてしまいます。皮をきちんとむかないと皮のあたりに渋が残るので要注意です。

意識して食べている人はあまりいないかもしれませんが、柿には渋柿の渋を抜いたもの、もとから甘い甘柿、甘くなったり渋くなったりする不完全甘柿の3種類があります。渋柿は中国から渡ってきたそうですが、甘柿・不完全甘柿は日本で突然変異した日本原産の果物だそうです。すごいじゃありませんか!

柿の渋みのもとは「タンニン」。甘柿はこれが不溶化しているため渋みを感じません。渋柿のタンニンは水溶性なので口に入れると渋く感じます。「不完全甘柿」はタネが入ることでタンニンが不溶化し甘柿に変化します。しかし、「不完全」という名の通り、全てが不溶化するわけではないため、甘いと思ったら渋かった、みたいなこともあります。不完全甘柿も一度脱渋という工程を経ていることが多いようです。

柿の品種名を調べてみると、聞いたことのない名前がわんさか出てきます。おそらく、名も知らぬ甘柿や渋柿が日本全国にあるのでしょう。また、渋柿を干して作る干し柿も、地域によって大きさや干し加減が違います。山梨県の名産「枯露柿」は山梨県の寒さと乾燥があってこそ。山梨県よりも暖かい東京で、あの大きさの干し柿を作るのはむずかしいでしょう。暖かい地域では小さめ、寒いところでは大きな干し柿が名産なのは、気候風土によるものなのです。

「医者が青くなる」と言われる柿ですが、わたしは食べすぎると便秘になるため、一度に半個くらいしか食べられません。柿のタンニンには便を固める作用があり、ペクチンには便を緩める作用があるはずなので、体質によってどちらかの作用が出るのでしょう。いやはや、なんとも一筋縄ではいかない柿ですが、からだにいいことは確か。冬に備えてたくさん食べてくださいね。

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コラム 手島 奈緒

株式会社大地(大地を守る会・現オイシックス・ラ・大地)で編集・広報・青果物仕入れなどを担当し、
おいしいものばかり食べていたせいかおいしいものが大好き。
2010年よりフリーランスライターとして農と食についての情報を発信中。

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