{ 食にまつわるお話 }2019.12.26

キノコは電気で作られている? キノコの秘密を調べてみました

機能的食品として注目をあびるキノコ。スーパーの野菜売り場には、ヒラタケやシイタケ、ナメコなど様々なキノコが売られています。そう言えば、キノコって野菜なんだっけ? なんて思ったことはありませんか? 鍋のおいしい今日この頃、キノコについて書いてみました。

キノコは電気でできている?



原木シイタケが顔を出したところ。雷が鳴るとわっと出てくるとか、発生が悪いときはホダ木をバシッと叩くとよく出るとか、原木シイタケには「菌の不思議」を感じます。


実はキノコはカビなどと同じ「菌類」。わたしたちが食べている部分は植物で言うところの「花」にあたるものです。スーパーなどで販売されているシイタケやエノキタケなどの栽培キノコは、自然の状態では朽木を分解して繁殖するキノコで「木材腐朽菌」と呼ばれます。枯れ木の代わりに人工的な培地「菌床」でも栽培できることから、一般的に売られているキノコはマッシュルーム以外はほぼ木材腐朽菌の仲間です。

一方、松茸や松露、トリュフなどは「菌根菌」という種類で、特定の植物との共生関係を結ぶため、菌床での栽培は今のところ成功していません。だからお高いのですね。

キノコは雑菌に弱いため、完全に温度管理された施設で、クリーンな状態で栽培されています。この状態を維持するために大量の電力を使うことから、キノコは電気でできているとも言われるほどです。キノコ栽培は、施設が近代化されればされるほど効率よくできる&安価でできることから、最近ではほぼ菌床栽培のキノコしか売られていません。しかしより自然に近い状態の栽培方法「原木」や「林地」栽培のほうが、実は食味がいいのです。

促成栽培の「菌床栽培」じっくり育つ「原木栽培」



シイタケの菌床栽培は培地がキューブ状になっています。直売所などで菌床栽培のシイタケを干した安価な干し椎茸が売られていますが、干し椎茸はそもそもが原木栽培で、生食用よりもさらに発生に時間がかかるいツワモノです。菌床の干し椎茸とは似て非なるもの。安価な干し椎茸には気をつけましょう。


一般的な菌床キノコの栽培期間は、最も長いシイタケで90日~120日、短いエノキタケで30日程度です。培地はそれぞれのキノコが好む木材や、コーンコブというトウモロコシの軸を砕いたものなどで作られています。そこに栄養剤を追加して菌を植え、キノコが発生するまでそのキノコが好む温度を保って成長を促します。

一方、より自然に近い環境で栽培する林地栽培、シイタケやナメコなどで行われる原木栽培では、自然環境内でキノコを発生させます。最近はナメコの原木栽培は見かけなくなりましたが、原木シイタケはまだまだ健在。山から切り出した広葉樹をホダ木にし、使い終わったら薪にして最後まで利用する、日本ならではのエコなしくみで栽培されています。

原木シイタケはナラやクヌギなどの広葉樹をホダ木にしてシイタケ菌を植え付けます
ホダ木を一年かけて分解し発生するシイタケは、じっくり育つことで食感がよく、食べた瞬間、木の香りがふわっと口中に広がります。自分のうまみを他の素材にも与え、料理全体の質を上げてくれる…原木シイタケにはそんな力があります。

ただ、ホダ木を山に上げたり発生に時間がかかったりと、原木シイタケは手間と時間がかかります。さらに木を移動したり水に浸けたりするなどの、重労働でもあることから、シイタケ農家も減っています。うちの近所で原木シイタケを売っているスーパーは1店しかありませんから、ひょっとしたらこのまま原木シイタケがなくなってしまうのでは!! と危機感を感じています。

もしお店で原木シイタケを見つけたときは、迷わず買ってみてください! きっとその香りや食感に驚くことうけあいです。

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コラム 手島 奈緒

株式会社大地(大地を守る会・現オイシックス・ラ・大地)で編集・広報・青果物仕入れなどを担当し、
おいしいものばかり食べていたせいかおいしいものが大好き。
2010年よりフリーランスライターとして農と食についての情報を発信中。

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