{ 食にまつわるお話 }2019.12.26

冬本番! 今食べたいおいしいもの その1「葱」

お寒くなりました。寒さが増してくると野菜がおいしく、甘くなります。霜が降りるとさらにおいしくなります。そんな冬野菜の代表選手、ネギについて書いてみました。

周年栽培されているけれど、おいしいのは冬!


関東では「長葱」と呼ばれているまっしろなピッカピカの葱、一年中スーパーに並んでいますね。長葱は、それぞれの季節にきちんと店頭に並ぶよう、周年栽培の技術が確率されている野菜ですが、本来の旬は「冬」。秋に種をまき、春に植え替え、暑い夏に土寄せを繰り返して収穫が始まるのが11月。ちょうど今からが葱本来のおいしさが楽しめる季節なのです。

 
霜が降りると葱の表面にこのような水滴がつきます。これ、実は水ではなく葱の糖分。なめると蜜のように甘いので「葱蜜」と呼ばれます。葱蜜が出てくると葱はほんとうに甘く、おいしくなります。


消費者にはうれしいむき葱だけど・・・・


長葱は収穫されたあと、泥のついている外側の皮が一枚むかれています。泥付きだと、洗う手間や泥を嫌う消費者が敬遠するからというのが理由です。一枚だけ手作業でむくのはめんどうなので、空気をビュッと吹き込んで外側の一枚だけをぶっ飛ばす「葱むき機」を使います。実は、葱むき機にも使える葱と使えない葱があり、やわやわとした柔らかい葱ではうまく皮がむけません。ということで、長葱は品種改良され、外側の皮がむきやすくなっています。これはつまり、外側の皮が硬いということ。鍋にするとその食感が少し気になることがあるのは、こういう理由なのです。

おいしい葱は12月が出荷本番! ぜひ在来種を



葱は種が取りやすいので、自家採種している生産者もいます。そういう葱はスーパーで見つけるのはむずかしいのですが、皮が柔らかく甘くてとろけるよう。まさに「葱が主役」です!

柔らかく、とろけるような食感が楽しめる葱を食べたいのなら、在来品種がオススメです。代表的なのは群馬県の「下仁田葱」。太くて短いどっしりとした形が特徴的な葱ですが、青いところもおいしく食べられます。甘みが強くなり、さらにおいしくなるのは1月から。青い部分は枯れ上がってしまうため、価格も高くなりますが、鍋に入れるとそれはもうおいしいのです。その他にも、全国各地に在来の葱がありますから、お出かけの際、道の駅や直売所などで変わった葱があったらぜひ買ってみてください。

くの字(というかへの字?)に曲がった松本一本ねぎなどの「曲がり葱」や赤葱など、昔からの葱は皮もやわらかく、加熱調理に向いています。在来種の葱が見つからない場合は、これからの季節、埼玉県の深谷葱もオススメです。いずれも泥付きで売られていることが多いのですが、泥付きのほうが持ちがいいため、この季節だけは泥付きを選択してみてください。いつもは脇役の葱が主役になることうけあいです。

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コラム 手島 奈緒

株式会社大地(大地を守る会・現オイシックス・ラ・大地)で編集・広報・青果物仕入れなどを担当し、
おいしいものばかり食べていたせいかおいしいものが大好き。
2010年よりフリーランスライターとして農と食についての情報を発信中。

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