{ 食にまつわるお話 }2019.12.30

冬本番! 今食べたいおいしいもの その3「大根」

お寒くなりましたね。冬に食べておいしい野菜、第3弾は大根について書いてみたいと思いいます。



消費者にも生産者にも優等生、青首大根


スーパーで売られている大根はほぼ「青首大根」という品種です。消費者的には、おろしにしてもお味噌汁でも煮物でも、とりあえずおいしく食べられる万能選手です。生産者的には、生育が早く、大きさも揃い、作りやすいという特徴があります。

青首大根の生育期間は、適期であれば早生品種で60日くらい。栽培期間が短いため、虫に食われたり、雨でうまく発芽しなくても、種をまきなおしてリカバーすることが可能です。また、青い首が出てくるので収獲期間の目安がつけやすく、根っこ部分はまっすぐ、さらに葉っぱもしゅっと上を向くため収獲もスカッとかんたんにできます。収穫したら倉庫の大根洗い機でガーッと洗い、上を向いてる葉っぱを切り落してすぐに出荷。収獲もその後の手間もあまりかからない青首大根は、大根の優等生なのです。


首が青いから青首大根。そのまんまだけどわかりやすい名前です。

おいしいけど作るのが大変、三浦大根


生産者から見て優等生の青首大根ですが、そうではない大根もたくさんあります。
例えば神奈川県の三浦半島で栽培されている三浦大根は、大根部分が先太りで抜きにくく、地面を掘り返さなくてはスカッと抜けません。葉っぱは横に広がりつつバッサバサに大きくなり、抜いたあとも邪魔っけになります。三浦大根は栽培期間が長く、収獲も大変。また形が不揃いのため出荷の調整も大変なのです。

また、しゅっとした青首大根であれば10アールに7000~8000本昨付けることが可能で、中には10,000本という人もいるくらいです。しかし葉っぱが横に大きく広がり、完成した大根の大きさが3kgから5kgにもなる三浦大根は、株と株の間が広く取る必要があるため、同じ面積で4000~3000本前後しか植えることができません。つまり、青首大根の3分の1から2分の1しか収穫できないことになります。

ということは、価格的には倍以上にならないと割が合いません。しかし手間暇かけて作った三浦大根を消費者が買うかと言ったらまた別の話。一本3kgもある大きな大根(しかも割高)をどうやって食べきったらいいのかがまず悩みの種。さらに、お買い物で重い大根を持ち帰るのも敬遠されます。売れれば生産者も作り続けることができますが、まずは買ってもらえなければ作れません。ということで、三浦大根は、三浦半島全体の大根の栽培面積の1%程度しか作られていないとのこと。もしかしたらもうじき作られなくなるかもしれませんね。

とは言え、この時期は煮物やおでん、ブリ大根など、大根の出番が増える季節。少し探せば昔からの品種が見つかることも多いものです。いつもの青首だけではなく、三浦大根や世田谷区の大蔵地区で作られてきた大蔵大根、丸くてかわいい聖護院大根など、昔ながらの品種を食べてみてください。大根の多様性を感じつつ、いつもと違う味わいを楽しんでみてください。

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コラム 手島 奈緒

株式会社大地(大地を守る会・現オイシックス・ラ・大地)で編集・広報・青果物仕入れなどを担当し、
おいしいものばかり食べていたせいかおいしいものが大好き。
2010年よりフリーランスライターとして農と食についての情報を発信中。

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