{ 食にまつわるお話 }2020.04.26

「六本足の家畜」知られざるミツバチの大活躍のお話

新型コロナウイルスのために今年はお花見ができなかった、という方が多いのではないでしょうか。わたしは花粉症なので、ここ数年お花見には出かけていませんが、それでもお散歩時に桜の花びらがはらはらと落ちてくるのを見ると、心が浮き立つ気持ちになります。来年もまた花は咲くけれど、2020年の春は一度だけ。少し寂しい花の散り際でした。

豊かな実りはミツバチのおかげ?


さて、しばらく前に、蜂類崩壊症候群というミツバチがいなくなってしまう現象が起き、世界中で大騒ぎになりました。原因はいまだにはっきりとはわかっていないようです。なぜミツバチごときでこんなに大騒ぎになるのか、不思議に思いませんでしたか? ハチミツなんて、一年に一瓶あければいいくらい。ミツバチはかわいらしいけど、そんなに大事なの? と。

実は、ミツバチはハチミツをわたしたち人間に与えてくれているだけでなく、果実の受粉という非常に大切な役割を担当しています。

海外ではアーモンドやりんごなどの果実の受粉は、主にミツバチなどのハナバチ類に頼っています。養蜂家は、ハチミツも採取しますが、果樹農家にハチを貸し出す事業も行っています。というか、どちらかというとこちらの事業のほうが収入が大きかったりします。もしそのミツバチがいなくなったら? 養蜂家のみならず、果樹農家も大変です。その年の実りが無くなるのですから。

 
気温が15度以下だったり、雨が降ると巣から出てこない、他にステキな花があるとそっちに飛んでいって役に立たないなど、ミツバチに働いていただくのはとても大変ですが、ハウスのなかだと温かいし雨も降らないしどこにも行けないし、よく働いてくれるようです。

日本では、桃やすもも、りんごは、ツツハナバチというハチと人間が受粉しています。ミツバチへの依存度が高いのはいちごとメロン。開花期になると、農家は、養蜂業者からミツバチの箱をいくつかもらってハウスに放します。この箱には女王蜂がいないこともあります。受粉して果実が実り、用済みになったミツバチは廃棄されます。感染症にかかっていたり、寄生虫を持ち込む可能性があるため、元の巣には戻れないのです。

以前、メロン農家が「取扱説明書に『燃やしてください』って書いてあってさあ、かわいそうでとてもそんなことはできなかった。でも秋になったら巣はカラになってたよ」なんて言っていました。わたしたちがおいしいいちごやメロンを食べるとき、ミツバチについて考えたりはしませんが、わたしたちの知らないところでミツバチは大活躍しているのです。

「六本足の家畜」とも呼ばれるミツバチ。養蜂業は養豚や酪農と同じ「畜産」部門です。ハチミツのほかに、豊かな果実の実りをわたしたちにもたらしてくれている、大切な家畜だからでしょう。他にも花の蜜を食べて生きているハナバチがいますが、彼らもとても大切な役割を果たしています。昨今、これらのハナバチ類が減少しているとのこと。ハナバチたちのために何ができるのか。これから少し考えていきたいと思います。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
コラム 手島 奈緒

株式会社大地(大地を守る会・現オイシックス・ラ・大地)で編集・広報・青果物仕入れなどを担当し、
おいしいものばかり食べていたせいかおいしいものが大好き。
2010年よりフリーランスライターとして農と食についての情報を発信中。

WEB ほんものの食べものくらぶ https://hontabe.com
BLOG ほんものの食べもの日記 https://hontabe.blog.fc2.com/