{ 食にまつわるお話 }2020.05.25

アブラムシを食べてくれるテントウムシの話

5月、過ごしやすいさわやかなお天気の日が続きますね。人間だけでなく、5月は虫たちの活動が始まるシーズンでもあります。そして、冬眠していたテントウムシの繁殖が始まります。

アブラムシを食べてくれるナナホシテントウ、冬の間どうしてるのか考えたことはありますか? 実は、ナナホシテントウは大きな石の下などで越冬し、春先、暖かくなるとそこから出てきて、恋のシーズンを迎えます。

5月。ナナホシテントウは幼虫の食べもの、つまり、アブラムシが繁殖していそうなところに卵を産みます。アブラムシは5月上旬から発生する野菜の害虫です。カラスノエンドウとかソラマメなどにうぎゃーと思うほどついてるのを見ることがありますよね。テントウムシは、アブラムシの大量発生に合わせて子どもを産むのです。賢い母さんって感じです。

ナナホシテントウなどのテントウムシ類は、アブラムシを食べてくれるいわゆる「天敵昆虫」。成虫のテントウムシは、野菜に取り付くと上に上にと向かっていきます。てっぺんに到着すると、パカッと羽を開いてどこかに飛んでいってしまいます。そのため、畑に射てほしいのはどちらかというと幼虫。なぜなら、幼虫は飛べません。サナギになるまで旺盛な食欲でアブラムシをもりもり食べてくれるのです。

実は、このような天敵昆虫の力を借りて有機農業や減農薬栽培を行う方法も考えられていて、「バンカープランツ法」と呼ばれています。

ウドンコ病の菌を食べてくれるキイロテントウ。なかなか見かけないのですが、昨年、わたしの畑に来てくれました。

例えば、ナス畑の周りにまず麦を植え、春先に麦につくアブラムシ(ムギクビレアブラムシ)を誘引してテントウムシを呼び寄せます。ムギクビレアブラムシはナスには被害を及ぼさないため、麦にこのアブラムシがついていても困ることはありません。ムギクビレアブラムシを食べに来たテントウムシがそこで繁殖し、ナスにつくモモアカアブラムシを食べてくれます。この方法は、有機栽培の畑でよく行われています。

アブラムシを食べてくれる昆虫はテントウムシだけはありません。アブラバチという小さなハチや、ヒラタアブという小さなアブの幼虫などもいます。農薬を散布しないでいると、これらの天敵昆虫が飛来して、そこにいるアブラムシやその他の害虫をもくもくと食べてくれます。農薬のように害虫を絶滅させることはできませんが、生態系が多様化することで、特定の害虫が爆発的に増えることはなくなります。小さな昆虫たちの力は侮れないのです。

アブラムシはプランターの花などにもつくことがあります。もしかしたらテントウムシが飛んできて、産卵してくれるかもしれません。テントウムシの幼虫は見た目は怪獣のようで、気持ち悪いと思う人も多いようですが、見かけたら邪険にしないで大切に育ててくださいね。

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コラム 手島 奈緒

株式会社大地(大地を守る会・現オイシックス・ラ・大地)で編集・広報・青果物仕入れなどを担当し、
おいしいものばかり食べていたせいかおいしいものが大好き。
2010年よりフリーランスライターとして農と食についての情報を発信中。

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