{ 食にまつわるお話 }2020.06.13

生物多様性のためにわたしたちが今日からできること

5月22日は「国際生物多様性の日」だそうです。だからと言ってとくに生物多様性に思いを馳せたりせず、いつものように一日過ごしてしまいました。反省反省。

ナショナルジオグラフィック日本版5月号で「虫たちはどこに消えた?」という特集が組まれています。無料公開されているのは虫たちの写真のみですが、世界中で虫が減少しているようです。これは日本でも同じでしょう。とくに果樹農家のこのようなつぶやきをよく聞きます。

「そう言えば、虫がいなくなったよね」「昔はもっといた気がしたけどなあ」

都市生活者には虫が減っていることは実感しにくい、というより、いなくなってせいせいするという人のほうが多いかもしれません。環境省の「生きものログ」https://ikilog.biodic.go.jp/Rdb/ で調べてみました。ここでは、都道府県別に絶滅危惧種が検索できますが、東京都で検索すると、かなりの虫がリストに載っていました。

虫が減る理由はいくつかあります。開発により生息地である森や里山が減少していること、そのため、食べものが見つけにくいこと、農薬などの薬の影響、外来種によって駆逐されてしまうなどなど。これはつまり、わたしたちの生活の変化によるものと言えるでしょう。

ヤマトシジミは足元40センチくらいを飛んでいる小さな蝶。実はカタバミにしか産卵しません。カタバミがなくなるとヤマトシジミもいなくなってしまう、どんな雑草にもそれをよすがとしている昆虫がいると知ると、世界に無駄なものはひとつもないのだ、と実感できます。

草ひとつない畑はいい畑?


例えばミツバチ。養蜂家は一年を通じてミツバチに蜜源植物を与えなくてはなりません。実は、夏になると本州に蜜源の植物が無くなるため、大規模養蜂を営む人は、トラック数台で北海道まで移動しています。手間も経費も相当かかりますから、国産のハチミツが高価なのも当然ですよね。このような蜜源植物の減少は、里山の開発や落葉樹の減少などが原因だと考えられています。

また、畑にいる天敵たちも、夏になると飢えて死んでしまいます。天敵昆虫は基本的に肉食昆虫ですが、エサがなくなると花の蜜や花粉を食べて生き延びることができます。しかし、この花が畑の周りに無いのです。

昨今の農家はこまめに草を抜き取る人が多く、というか、草は生えていると駄農とか言って忌み嫌われますから、草は生やしてはいけません。きっちり除草された草一つない畑がいい畑。しかしこのような畑では天敵昆虫たちが生きていけません。
畑だけでなく、道端や駐車場、庭に生える雑草もきれいに除草されます。草一つ無い美しい庭はステキなのですが、昆虫たちにとっては生きづらい庭になってしまいます。

さて、そんな虫のために、わたしたちができることがあります。それは、花が咲く植物を育てること。虫たちは小さくてたくさん花が咲く植物が好き。とくにオススメなのが、バジルや青じそです。次々に、そしてかなり長い間花を咲かせてくれるので、その間、ヒラタアブやミツバチなどの訪花昆虫が次々に訪れます。ああ、わたしは今虫を養ってるんだなーとしみじみ実感できますよー。

虫たちはそれぞれが環境を健全に保つ大切な役割を担っており、また、食物連鎖の下支えもしています。その生命の輪が崩れると、どうなってしまうのか。その恐ろしさをわたしたちは認識すべきかもしれません。

皆さんも、小さなプランターでハーブを育ててみてはいかがでしょう。

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コラム 手島 奈緒

株式会社大地(大地を守る会・現オイシックス・ラ・大地)で編集・広報・青果物仕入れなどを担当し、
おいしいものばかり食べていたせいかおいしいものが大好き。
2010年よりフリーランスライターとして農と食についての情報を発信中。

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