{ 食にまつわるお話 }2020.06.13

なんでもとりあえずおいしくなるけどちょっと待った!「うまみ調味料類」

「世界文化遺産」に登録された日本料理の真髄は何? と尋ねられれば、やはり「だし」ではないでしょうか。日本独特の概念「うまみ」は「UMAMI」となり、世界で通用する言葉になりました。豊富な海産物から生まれるうまみ、つまり「だし」は、家庭料理の基本でもあります。この繊細な味わいを幼い頃から煮ものやお味噌汁であたりまえに味わえる日本人は、世界一繊細な味を楽しんでいる国民と言ってもいいでしょう。とは言っても、最近はそうも言えないかもしれません。

何にでも入っている調味料類とたんぱく加水分解物


 「うまみ」とは「アミノ酸」のことですが、昆布のグルタミン酸、かつお節のイノシン酸、しいたけはグアニル酸など、アミノ酸にも複数のうまみ成分があり、これらを化学的に合成したものが「うまみ調味料」と呼ばれています。その草分け的存在「味の素」はグルタミン酸が主成分。日本ではほとんど見かけなくなりましたが、アジアの国々でふんだんに使われています。
 加工食品に「うまみ」を与える代表的な物質は、食品添加物の「調味料(アミノ酸等)」と、ハム・ソーセージやお惣菜類に必ず入っている「たんぱく加水分解物」、そして「酵母エキス」の3種類。これらが入っていないものは探すのが難しいほどです。
 うまみの素となるこれらの物質は、かつおほんだしやコンソメの素などの調味料やだし入り味噌汁などにも含まれており、わたしたちの食卓を化学的なうまみで席巻しつつあります。


ハム・ソーセージや惣菜類などの加工品にうまみ調味料類が使われる理由は、そもそもの原料があまりおいしくないことが挙げられます。おいしくないものからおいしい食品を作るのはムリですから、そのムリ分を化学的なうまみで補填していると言ってもいいでしょう。


化学的なうまみはおいしすぎて肥満のモト、食べ過ぎには要注意!


 うまみ調味料類の問題は、安全性というよりはその強烈なうまみにあります。クッキリとしたうまみはとてもわかりやすく、食べ過ぎることもしばしば。結果として塩分、糖分の取り過ぎによる肥満や成人病リスクの増加に加え、繊細な味に興味がなくなるなどの問題もはらんでいます。
 女の子はおとなになると自分の味をつくり始め、好みが大きく変わることがありますが、男の子は幼い頃の食べものの好みがおとなになっても変わりません。そう言えば夫の好きなものは何歳になっても「寿司、カレー、ラーメン、ハンバーグ」だったりしますよね。こういった食品には、塩分や脂質、糖分が過剰です。お腹ポッコリ、血圧高めの原因は幼い頃からの食体験に影響する可能性があるのです。
 四季に恵まれ、海に囲まれた自然豊かな国だからこそ生まれた「うまみ」の伝統を大切にすることは、家族の健康にもつながるのですね。いやはや、日々のごはんの責任は重大なのです。

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コラム 手島 奈緒

株式会社大地(大地を守る会・現オイシックス・ラ・大地)で編集・広報・青果物仕入れなどを担当し、
おいしいものばかり食べていたせいかおいしいものが大好き。
2010年よりフリーランスライターとして農と食についての情報を発信中。

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