{ 食にまつわるお話 }2020.06.13

砂糖だけじゃないニッポンの甘み

清涼飲料水に含まれる糖分をビジュアル化する際、よく角砂糖やスティックシュガーが使われることがあります。わかりやすいインパクトを与えるためのビジュアルですが、実は昨今の清涼飲料水に砂糖が使われているものはほとんどありません。砂糖の代わりに使われているのは「果糖ぶどう糖液糖」「ぶどう糖果糖液糖」などの「異性化糖」です。

原料は遺伝子組み換え作物? 果糖ぶどう糖液糖


異性化糖の原料は、砂糖のようにサトウキビやテンサイではなく「デンプン」です。デンプン原料としてトウモロコシが主として使われていることから、アメリカでは異性化糖のことを「ハイフラクトースコーンシロップ」あるいは単に「コーンシロップ」と呼んでいます。そしてその原料はほとんどが遺伝子組み換えトウモロコシです。

実はこの異性化糖、戦後、砂糖の代替品として日本で開発されました。当時、原料となるデンプンに使われたのは入手しやすかったじゃがいもやさつまいもでした。現在では、ほとんどのデンプン原料は遺伝子組み換えトウモロコシのことが多く、その他のデンプンが使われることはあまりないようです。トウモロコシは安価で入手できるから、ということでしょう。

異性化糖は「果糖」。血糖値は上がりにくいのですが、太ります。清涼飲料水の飲みすぎには要注意です。

砂糖よりも甘くて安くて扱いやすいんだけど。。。


ほとんどの甘みが異性化糖に取って替わった理由は、砂糖よりも割安で液体で使いやすいこと、また、冷菓・清涼飲料水の場合、甘味を感じやすくなることによります。異性化糖の特徴、スッキリと切れ味のある甘みはいいのですが、実は食味という点で少々弱点があるようです。

紅茶で有名なとある清涼飲料水メーカーでは、ミルクティーと缶入りの紅茶には砂糖を使っているそうです。缶入り紅茶は、ホットで販売する場合があり、その際に異性化糖の風味が合わないそう。さらに、ミルクの風味にも合わないと判断されているのです。異性化糖の風味は紅茶の香りや味わいを邪魔するのかもしれません。

昨今ではアスパルテームやアセスルファムKなどの人工甘味料が低カロリー商品によく使われていますが、これらの特徴的な味が食品の風味を損ねていると感じます。カロリーを気にしすぎて素直な甘さが楽しめないのは残念な気がします。砂糖の甘みは食品の味を邪魔することはありませんから、やはり昔ながらの食材の方が優れているということなのでしょう。

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コラム 手島 奈緒

株式会社大地(大地を守る会・現オイシックス・ラ・大地)で編集・広報・青果物仕入れなどを担当し、
おいしいものばかり食べていたせいかおいしいものが大好き。
2010年よりフリーランスライターとして農と食についての情報を発信中。

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