{ 食にまつわるお話 }2020.07.23

桃のピークは一週間? 実はどんどん移り変わっている品種

長雨で日照不足の今年、プラムや桃は受難の年と言えそうです。

プラムも桃も、雨の影響をとても受けやすい作物。雨が降り続いておひさまが出ないと木は光合成をすることができません。しかし根っこからはどんどん水分を吸い上げます。その結果、果実が水っぽくなってしまいます。また、病気の発生も頭の痛い問題です。通常、病気の原因菌は木の皮の間や枯れた葉っぱなどに潜んでいます。雨が多いと菌は水滴とともに果実に移り、一定の条件を満たすと発症します。病気が多く、味が薄い。今年はそんなプラムや桃が多かったのではないでしょうか。

さて、梅雨明けとともに、桃のスター品種がスタートします。その品種名は「白鳳」。お店でも品種名で販売されている「白鳳」は、果肉が柔らかくとろけるような食感が特徴の、7月の桃の代表選手です。贈答品などにも使われるため、言ってみれば、さくらんぼでいうところの佐藤錦のようなものでしょうか。7月中旬、おおむね梅雨明け頃からスタートする白鳳のピークは一週間から10日で、それが終わると次の品種が始まります。

え? 桃って白鳳だけじゃないの? なんて思う人が多いのですが、実は早生品種から晩生種まで、桃の品種はたくさんあります。メジャー品種は「白鳳」と7月下旬にスタートする「一宮白桃」、黄色が特徴的な「黄金桃」くらいでしょうか。その他、思いつくだけでも、はなよめ、ちよひめ、日川白鳳、川中島白桃、浅間白桃、長澤白鳳、あかつき、黄貴妃、きららの極などがあります。これらの品種が産地を変えつつお店に並んでいるのですが、品種名を伝えても消費者には覚えきれないし、生産者とバイヤーが知っていればいいということなのか、マイナー品種は単に「桃」で売られています。

とてもめずらしいひらべったい桃「蟠桃」。赤い品種もありますが、これはチョーレアな黄色い蟠桃。おいしいんですけど、作っている人はほんとにいません。

よく「桃を買ったらガリガリでおいしくなかった」なんて話を聞きますが、実はガリガリなのは品種の特性。桃の食感は大きく分けて、「白鳳」に代表されるとろけるような食感と、晩生種に多いカリッとした食感の2種類があります。なので、木でじゅうぶんに熟していれば、カリッとした食感の桃もとてもおいしいもの。早くもぎすぎればどんな桃もガリガリでおいしくないのは前回お知らせしたとおりですが、硬い食感の桃でも木で熟せばきちんとおいしいのです。お店でそういった桃に出会えないのはほんとうに残念なことですね。

白鳳が終わったあとも、桃は8月下旬まで出荷されます。産地直送の桃で白鳳の次におすすめなのは、黄金桃やきららの極、黄貴妃などの黄色い桃。黄貴妃やきららの極は大玉で味が濃く、上手に作る人のものはまるでマンゴーのような食感と芳香があります。8月下旬から始まる黄色い桃も、ぜひ食べてみてくださいね。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
コラム 手島 奈緒

株式会社大地(大地を守る会・現オイシックス・ラ・大地)で編集・広報・青果物仕入れなどを担当し、
おいしいものばかり食べていたせいかおいしいものが大好き。
2010年よりフリーランスライターとして農と食についての情報を発信中。

WEB ほんものの食べものくらぶ https://hontabe.com
BLOG ほんものの食べもの日記 https://hontabe.blog.fc2.com/