{ 食にまつわるお話 }2020.08.15

お肉の向こうに世界が見える?

日本のお肉はトウモロコシでできている?


安価な海外産の牛肉・豚肉を多く見かけるスーパーマーケットの精肉売り場。週刊誌によく特集が組まれている米国産牛肉などの輸入肉は、飼料や飼育方法が不安で、という方も多いのでは。では国産の肉はどうでしょう? 牛や豚、鶏がどのように飼われているか、飼料に何を食べているか、消費者にはほとんど公開されていないのが実情です。

飼料穀物はほとんどが遺伝子組み換え作物ですが、中でもトウモロコシの占める割合が多く、配合飼料のトウモロコシは、約50%(令和2年7月 飼料を巡る情勢 農林水産省)となっています。数年前、トウモロコシ価格が高騰したことから、エコフィードや飼料米など飼料の国産化に取り組んではいますが、まだまだトウモロコシ依存から抜けることがむずかしいようです。

お肉を食べることで起きるいろいろなこと


すべて国産の飼料を食べている和牛が全国各地で生産されています。そのひとつが山形村短角牛。赤身のお肉が特徴で、霜降り肉のように胃がもたれることもなく、タンパク質食べたーって気がします。

さて、牛肉を1kg作るのにどれぐらいの穀物飼料が必要なのでしょう。牛はトウモロコシだけ食べているわけではありませんが、トウモロコシに換算すると11kg必要だと言われます(1998年農業白書より)。そのトウモロコシを1kgを生産するためには、1800リットルの水が必要です(環境省バーチャルウオーターより)。

私たちは肉を食べることで間接的に大量の穀物を消費し、さらに海外の水も大量に消費しています。
バーチャルウオーターの量は、日本で一年間に使う生活・工業・農業用水の総量とほぼ同じ。海外の農地では水不足による土壌の流亡などが問題となっていますから、私たちの選択が海外の環境に大きな影響を与えているとも言えます。さらに、家畜が排泄する糞尿の量は、一年間で8663万トン(2008年)にもなり、アンモニアガス発生などの環境問題にもなっています。

「肉を食べる」ことで起こる数々の問題。だからと言って良質なタンパク源であるお肉を食べない、という選択肢は現実的ではありません。しかし、私たちは国産のお肉を選ぶことができます。その選択は、国内の農家を応援し、農業の活性化にも繋がります。

私たちのからだは自分が食べたものでできています。からだだけでなく、私たちの日々の選択が、私たちの未来を決めています。そのことは、常に忘れずにいたいと思っています。

令和2年7月 飼料を巡る情勢 農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/lin/l_siryo/attach/pdf/index-513.pdf

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コラム 手島 奈緒

株式会社大地(大地を守る会・現オイシックス・ラ・大地)で編集・広報・青果物仕入れなどを担当し、
おいしいものばかり食べていたせいかおいしいものが大好き。
2010年よりフリーランスライターとして農と食についての情報を発信中。

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