{ 食にまつわるお話 }2020.09.14

「巨峰」という名のぶどうの秘密

ぶどうの季節がやってきましたね!!

ぶどうと言えば秋の果物のようですが、スーパーの果物売り場では一年中ぶどうが売られています。国産ぶどうが店頭に並び始めるのはタネなしデラの6月がスタートですが、昨今ますます早くなってきていますね。これは果樹の鉄則「早く出したら売れる」という市場の論理によるもの。その結果、早生品種(生育期間が短く早く熟したり収穫できるもの)がどんどん開発され、何もかもが前倒しになっているような気すらします。

前倒しにするためには、早生品種の他に、加温ハウスは温度のコントロールによって生育を早めるという方法もあります。本来は7月に熟すはずの種無しデラウエアが、最近では6月、早いものは5月末から見かけますから、果物で季節を感じるのはますます難しくなっているということかもしれませんね。

その他にも、ジベレリンという植物ホルモン剤(農薬登録の種類は植物成長調整剤)を使用して、早く熟させるという方法があります。これは以前にもご紹介しましたが、そもそもはデラウエアというぶどうの栽培技術がきっかけでした。

「タネなしぶどうとタネありぶどう、どっちがおいしい?」
https://fromkitchen.jp/column/2743

ジベレリンを使うと、ぶどうはタネがなくなります。無核化のほかに果実の肥大という目的もあり、昨今ではジベレリン前提の品種開発が主流で、ぶどうからタネがなくなりつつあります。しかししかし。実は、「タネなしぶどうとタネありぶどう、どっちがおいしい?」ぶどうはタネが入っているほうがおいしいのです。

ということで「巨峰」です。実は「巨峰」という品種はないことをご存知ですか?



「巨峰」の種苗登録名は「石原センテニアル」。巨峰は「日本巨峰会」が登録している商標名なのです。品種名の「石原センテニアル」を知ってる人はごく一部で、登録商標が品種名のようになってしまった巨峰ですが、「巨峰」と称して販売するには、登録している「日本巨峰会」にお金を払わなくてはなりません。JAなどで一括で支払っている場合もあるようですが、なし崩し的に「巨峰」と言って売ってる人も多そうですね。

巨峰の歴史は、日本巨峰会のサイト(http://www.kyoho-kai.net/index.html)をに詳しく書かれています。

スーパーではほぼタネなし巨峰しか見かけませんが、おいしいのは断然タネあり巨峰です。生産者に聞くと、おいしさのピークは3日から1週間ほどだそう。なので、ほんとうにおいしい巨峰を食べたい場合は、産地直送してもらうのがいいでしょう。わたしは山形県の生産者から1kg送ってもらっていて、年に一度、この人の巨峰しか食べません。本来の巨峰の味を知ってしまうと、スーパーの巨峰は、酸味が強かったり甘みが足りなかったりして食べる気がしないのですが、この理由は「早採り」と「貯蔵」のため。

なぜそうなのか。次回に続きます。

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コラム 手島 奈緒

株式会社大地(大地を守る会・現オイシックス・ラ・大地)で編集・広報・青果物仕入れなどを担当し、
おいしいものばかり食べていたせいかおいしいものが大好き。
2010年よりフリーランスライターとして農と食についての情報を発信中。

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