{ 食にまつわるお話 }2020.12.13

野生の息吹を取り入れよう! ジビエのお話

数年前からジビエブームと言われ、野生鳥獣のお肉が話題になっていますよね。とは言え、ジビエは一般的なお肉ではないため、ほとんど縁がなく食べたこともない、という人のほうが多いのではないでしょうか。狩猟シーズンに捕獲された野生鳥獣の肉を一般的にジビエと呼びますが、最近は、鳥獣被害で駆除されたものも含んでいます。というか、駆除したイノシシや鹿肉の有効活用でのほうが多いかもしれません。ということで、気になるジビエのお話です。

レストランなどでジビエ料理を食べることはあっても、豚や牛などと違ってスーパーで販売されているのをまず見かけないジビエ。それはお肉の流通ルートが確立されていないことが大きな理由です。家畜の肉は、出荷された家畜が所定のと畜場で衛生的に処理され、解体され、小売店に並ぶというルートが確率されています。法律に則って衛生管理や安全性が担保されていることから、人畜共通感染症などに感染する恐れもなく、安心して食べることができます。

ではジビエはどうでしょう。基本的に野生動物の肉は、狩猟や駆除などで捕獲されたもの。これらをおいしく安全に食べるためには、解体処理の衛生管理が必要になります。したがって、平成26年に野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)定められました。とは言っても、狩猟とは山の中で行われることが多いもの。数十キロもある鹿やイノシシを所定の解体施設まで持っていき、お肉にすること自体とても大変です。また、狩猟シーズンは10月から3月(地域によって差があります)までと決まっていますから、通年確保できるわけではありません。通常のお肉のように取り扱うことはとてもむずかしいのです。

鹿肉のオレンジソースあえ。脂肪分が少なく、赤身で鉄分が多く含まれる鹿肉はヘルシーな女性向けのお肉です。臭み消しにはオリーブオイルでマリネするのがおすすめ。

いつも同じ量のお肉がスーパーの同じスペースに並んでいるのは、家畜の出荷量が一定しているからこそですし、いつもと同じ味のお肉が食べられるのは、一定の食味が確保できるような配合飼料を食べているからこそ。しかし、野生鳥獣ではそうはいきません。木の実や葉っぱなど自然のものを食べているため、食味にはバラつきもあり、また、雄と雌とで味が違ったりもします。そこがシビエならではの楽しみでもあるのですが、口に合わない人もいるのは事実です。ジビエが一般的になり得ないのは、このあたりにも理由がありそうです。

11月に入り、まさに今、狩猟シーズン。厳しい冬に備え、ドングリや果実などをおなかいっぱい食べている鹿、イノシシ、カモは、最も食味が良くなる季節でもあります。自然のままに育ったそれらの肉はまさに「天然のお肉」。その野生の息吹を取り入れれば、人も元気になれそうです。もしレストランや旅館のメニューで鹿やイノシシ、カモなどを見つけたら、ぜひ一度食べてみてください。内側から野生のパワーが湧いてくること、うけあいです。

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コラム 手島 奈緒

株式会社大地(大地を守る会・現オイシックス・ラ・大地)で編集・広報・青果物仕入れなどを担当し、
おいしいものばかり食べていたせいかおいしいものが大好き。
2010年よりフリーランスライターとして農と食についての情報を発信中。

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