{ 食にまつわるお話 }2021.01.24

わたしを作る食べものはていねいに作られたものがいい

このタイトルは、クノールカップスープのCMで永野芽郁ちゃんがつぶやく言葉です。カップスープをおいしそうに食べる彼女を見つつ、いいコピーだなと思いつつ見ています。

実際にはカップスープがどのようにていねいに作られているのかはよくわかりません。原料がいいのか、手順がていねいなのか、手作りなのかなどなど、いっさいわからないのですが、CMを見ているとカップスープがていねいに作られている気がしてくるのですからす不思議です。

よく考えてみると、実はわたしたちは食べものがどのように作られているか、あまりよく知りません。加工品はもちろん、お肉も卵も野菜も、すべての食品が生産されている現場が見られるなんてこともめったにありません。時折、テレビ番組で畑や果樹園、加工品の工場などが紹介されることがありますが、それらがすべてではないし、とくに畜産現場で顕著ですが、あえて隠されている部分も多いものです。

スーパーマーケットの棚には多くの食品が整然と並んでいて、消費者はただもくもくと、食べたいもの、必要なものを取ってはかごに入れています。食品は、食品表示法で定められている情報が記載されていますが、得られる情報はそれだけですから、それ以上の情報をスーパーで得るのは至難の技です。八百屋さんや魚屋さん、お肉屋さんで買えば、もう少しわかるかもしれませんが、最近ではそういった小売業者を探すこと自体が至難の技になりつつあります。わたしたちはほんとうに、食べもののことを知らない、知らされていないのです。

そんななかで「ていねいに作られたもの」とは何でしょう。小さな食品メーカーが手作りで作っている食品のこと? それとも有機農業で栽培された野菜? そもそも「ていねい」とは何のことなのか。なんだかよくわかりません。「ていねい」は耳触りのよい美しい言葉でいいイメージを与えてくれますが、具体的にはなんだかよくわからない言葉でもあるのです。


具沢山のお味噌汁は立派な一品。とくに芋煮や豚汁は、芋(炭水化物)とお肉(タンパク質)、食物繊維も一気に摂取できる手抜きの一品として便利です。


では日々のおうちごはんはどうでしょう。食材を洗い、切り、調理して味付けして盛り付けて、などなど、細かい工程を経て作られています。かんたんにできるお味噌汁でも、まずだしを取り、材料を切って鍋に入れ、火が通ったら適量の味噌を入れて、ぐらぐら煮立てず火を止めなくてはおいしくなりませんし、炊飯器が作ってくれるごはんも、まず研がなくてはおいしいごはんにはなりません。ということは、家庭料理こそが「ていねいに作られている食べもの」なのではないでしょうか。

新型コロナウイルスの脅威がまったく収まらない昨今ですが、こんなときだからこそ、ていねいに作られた食べものが必要です。おうちで食べるおうちごはんこそが、わたしたちの体を作る素。いい材料を使えばおいしい食品ができるように、健康な体を作るにはいい原材料を食べる必要があるのです。日々のごはんを作る人の責任は重大! めんどくさいときは手抜きもしつつ、ほどほどにがんばりましょう!

今年もおいしいもの、ていねいに作られたものを食べて、元気に、健やかに暮らしていければと願っています。今年もよろしくお願いいたします。


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コラム 手島 奈緒

株式会社大地(大地を守る会・現オイシックス・ラ・大地)で編集・広報・青果物仕入れなどを担当し、
おいしいものばかり食べていたせいかおいしいものが大好き。
2010年よりフリーランスライターとして農と食についての情報を発信中。

WEB ほんものの食べものくらぶ https://hontabe.com
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