{ 食にまつわるお話 }2021.04.30

おいしいお肉の見つけ方 - 豚肉の巻

豚肉と言えばトンカツ。トンカツと言えばごちそう。産地訪問に行くと、トンカツを食べさせてもらうことが多くて、昔キライだったけど食べられるようになりました。


お肉の第二回目は豚肉のお話です。

基本的に、肉の味を決めるのはまず「血統」。次が「飼料」です。血統とは、たとえば黒毛和牛の場合だと、主にオスの血統によって霜降りの度合いとか歩留まりとかが決まるそう。ブランドオスの精子が何万円もするなんてのは、当然の話なのですね。

さて、そこで豚です。豚肉にも「おいしい血統」が存在します。それが黒豚。俗に黒豚と言われますが、実はこれ、バークシャー種のこと。20数年前、バークシャー種が少しでも混じっていれば「黒豚」と表示して販売されていたことがあり、優良誤認が問題になりました。そこで農林水産省では「食肉小売品質基準」により黒豚をきちんと定義づけしたのです。
現在では、バークシャー種100%の豚のみを黒豚と表示して販売することができます。

黒豚がおいしい理由は?


あまり意識されていないのですが、一般的に販売されている豚肉は、三元交配種「LWD」という大型の豚の肉です。ランドレース(L)と大ヨークシャー(W)をかけ合わせたメスと、デュロック(D)というオスをかけ合わせた大型の豚「LWD」は、多産で一度に12~13頭の子豚が生まれます。生育期間は190日。早く大きくなり胴が長いため、ロース肉がたくさん取れて歩留まりがいいので、現在ではほとんどの養豚家がLWDを飼育しています。「○○豚」などのなんとなくブランドっぽい名前がついている豚もおおむねLWDですが、違うのは飼い方。特別な飼料を与え飼養密度などにも配慮されていることが多いようです。

大型種LWDに対して、黒豚(バークシャー種)は中型種。小ぶりで生育期間が210~230日と大型種と同じだけ肉が取れる大きさになるのに余計に時間がかかり、子豚は7~8頭くらいしか生まれません。何もかもがこぢんまりとしている黒豚。しかし、LWDと比較して味わいが濃く、うまみも強いのが特徴です。脂身の甘さと言ったらうっとりするほど。黒豚は、シンプルな焼肉や豚しゃぶなどで食べるのがオススメ。「あああああ、豚肉食べたー」って気がします。

さらにおいしい中ヨークシャー種


「黒豚サイコー!」と言いたいところなのですが、さらにおいしい豚がいます。それが「中ヨークシャー種」というレアな豚。LWD&大規模養豚が主流になるまでは、日本の農家は中ヨークシャー種を飼っていました。しかし中ヨークシャー種にも欠点がありました。黒豚同様、中型種なので早く大きくならないこと、黒豚よりも脂肪がごっそりつくので精肉の歩留まりが悪いことです。

ということで、大規模養豚に向かない中型種でもある中ヨークシャー種は、早く肉になるLWDにどんどん取って代わられました。鹿児島黒豚のように産地形成ができるほど豚自体が残っていなかったせいかブランド化にも乗り遅れ、今では中ヨークシャー種を飼っている養豚家は数えるほど。めったに食べられないレアなお肉になってしまいました。ほんとうにおいしいんですよ。残念です。

ということでおいしい豚肉は


1.黒豚(サミットで“六白”というブランド名で売られています。ぜひ!)
2.飼料にこだわって作っていると表示されている「○○豚」的な名前がついている「LWD」
 →養豚家の方に聞いたところ、豚の味は品種と飼料で作るものだそう。飼料8割品種2割とおっしゃっていましたから、こだわり飼料を食べてる豚はおいしそうです。
3.絶対オススメ中ヨークシャー種 
見つけたら食べてみる価値あり!! です。


(手島奈緒)