収穫したオリーブの果実

{ 食にまつわるお話 }2021.05.16

ほんもののエクストラバージンオリーブオイルを食べよう!

収穫したオリーブの果実
パレスチナのオリーブ「ナバルバラディ」という品種だそう。黒く熟したオリーブの果実を絞っただけのパレスチナ産のオリーブオイルは風味豊かで豆腐にでもごはんにでもかけちゃうので、あっという間に太ります。



2019年、パレスチナ(ヨルダン川西岸地区)へ、オリーブ畑とオリーブ農家、オリーブオイルの搾油場の見学に行きました。比較的平和な時期だったのだといまさらながら痛感しています。というのも、先日のエルサレムでの衝突以降、ガザ地区からテルアビブへロケット弾が次々に打ち込まれたり、ガザ地区への空爆などがメディアで報道されているからです。5月15日にはガザ地区だけでなく、ヨルダン川西岸地区のヘブロンでイスラエル兵とパレスチナ人との衝突が起こっています。ヨルダン川西岸地区でオリーブを作っている農家や輸出している人たちの無事を祈らずにはいられません。

日本のエクストラバージンオイルは偽物?


さて、オリーブオイルを取材しているとき、フェアトレード団体の担当者が「日本のエクストラバージンオリーブオイルは偽物なんですよ」とおっしゃいました。実はオリーブオイルには、国際オリーブオイル協会(IOC)という細かい基準を定めている団体があります。日本はIOCへは参加していないため、IOC基準のエクストラバージンにあてはまらないオイルをエクストラバージンオイルと表示して販売している、というかできるのです。スーパーで見かける「エクストラバージン」オイルのなかに、べらぼうな価格がするものとそうでもないものがあるのは、IOC基準に即したものと日本の基準に即したものの違いということのようです。

日本のオリーブオイルは「食用植物油脂の日本農林規格」(JAS法)によって2種類に分類されています。「オリーブ油」は「オリーブ特有の香味を有し、おお おおむね清澄であること」。もうひとつの「精製オリーブ油」は「おおむね清澄で香味良好であること」。非常にあいまいな言葉です。原材料はどちらも「オリーブ油以外のものを使用していないこと」ですが、これは逆に言うと、オリーブオイルを複数ブレンドしてもOKってことではないでしょうか。規格はこの2種類のみで「エクストラバージンオイル」という規格はありません。

国際オリーブ協会(IOC)ではオリーブオイルの規格が非常に細かく定められています。果汁を絞ったままのオイルがバージンオリーブオイルです。そのなかでもエクストラバージンオイルと呼称するためには、オイルの酸度が0.8以下、さらに官能検査が義務付けられていて、香りや味に欠陥がないことと決まっています。エクストラバージンオイル以外は、酸度によってあと3段階のオイルがあります。そのほかに精製オリーブオイルや、精製オイルにバージンオイルをブレンドしたオリーブオイルや、食用に向かないオイルもあります。くわしくはWikipedia「オリーブオイル」をご参照ください。

エクストラバージンオイルは日本のお醤油


オリーブオイルの歴史は古く、パレスチナでは「パレスチナがオリーブの原産地だ」と言っていました。どの国でも、最高級のオリーブオイルは油というより調味料的な利用方法が主になります。パレスチナでは、パン、フェタチーズ、豆のペーストなど、とにかく何にでもオリーブオイルをバンバンかけます。オリーブ独特の香り、ポリフェノールの爽やかな苦味と風味は、まさに日本のお醤油のような感じです。このようなオリーブオイルを食べてしまうと、日本のエクストラバージンオイルは香りも薄く、風味も薄く、物足りなくなります。

なかには、大手メーカーの小瓶でけっこうな価格がするオリーブオイルもあります。よく見ると、オリーブオイルの原産地(イタリアとかスペインとか)の地域の各付けマークやロゴが表示されています。こういうオイルは日本のJAS規格ではない海外の別の規格のオイルということです。ほんものにはきちんとしたマークが表示されて販売されているということかもしれませんね。であれば、スーパーでは小瓶でちょっと高めのオリーブオイルを買うのがいいかもしれません。

エクストラバージンオイルは香りや風味を楽しむもの。安価なエクストラバージンオイルをなんとなく良さそうだからと加熱調理に使うのはいいのですが、なんちゃってエクストラバージンにはポリフェノールなどの健康効果はほとんどないと考えたほうが良さそうです。エクストラバージンオイルは小さな瓶でも1,000円近くしますから、そもそも加熱調理に使おうなんて気持ちにはなれません。そして、一度その香りと風味を味わってしまうと、偽物オイルは使えなくなります。
「コールドプレス・無濾過」なんて書いてあるエクストラバージンオリーブオイルを見つけたら、ぜひ買ってみて食べてみてください。その野性的な味わい、風味、香り。きっと幸せにつつまれるはず。ほんものにはほんもののちからが宿っているのです。

(手島奈緒)